研究概要 |
器官培養は胎生15.5日SDラット胎仔顎下腺原基を実体顕微鏡下で摘出し,1mlのBGJb培地に浮かべたサイクロポア膜上に5-6glandsずつのせ,CO2インキュベーターにて1時間前培養を行った.10%FCSおよび細胞増殖因子や種々の阻害剤を培地に加えて培養を開始し,24,48時間後の形態変化を記録した.培養顎下腺からtotal RNAを精製し,水チャネルAQP5等の発現をRT-PCRにより解析した.初めに,顎下腺の分枝形成を促進すると考えられているEGF, FGF,およびHB-EGFの効果を解析したが,コントロールと比べて分枝形成は特に促進されず,AQP5等の発現にもほとんど影響しなかった.増殖因子前駆体等の活性化に関わるプロセシング酵素SPCファミリーに共通の阻害剤Dec-RVKR-CMKの存在下で分枝形成は抑制され,AQP5の発現レベルから細胞の分化度も低いことが確認された.この抑制効果はロイペプチン等一般的なトリプシン様セリンプロテアーゼ阻害剤では認められなかった.分枝形成が抑制された場合,AQP5の発現レベルが低い他,SPCファミリーのPACE4の発現も減少したが,同ファミリーのfurinの発現は減少しなかった.PACE4はfurinと異なりヘパリン結合配列を有し,ECMに局在することから,分枝形成へのヘパリンの影響を解析した結果,分枝形成とAQP5発現は共に抑制された.また,PACE4触媒領域に対する特異抗体でも分枝形成とAQP5発現は共に抑制され,Dec-RVKR-CMKによる分枝形成とAQP5発現の抑制はレコンビナントBMP2を加えることで回復した.以上より顎下腺の分枝形成はPACE4により活性化される増殖因子等のシグナル伝達の結果促進され,AQP5発現が誘導されることが示唆された.
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