研究概要 |
ラット脳幹孤束核細胞(以下NTS)の電位依存性カルシウムチャネル(以下VDCCs)に対するアンギオテンシンII(以下Ang II)の効果を検討した。単離したNTSに全細胞膜記録型パッチクランプ法を適用し、Ang IIを投与したところ、167nMのEC50を有するVDCCs促進作用が見られた。促進したVDCCsのサブタイプを調べるとL型VDCCsであった。この応答はAT1受容体アンタゴニストの前処理によって遮断された。また細胞内にGTP結合蛋白質のサブタイプGiの抗体を注入すると、この応答は発現しなくなった。さらにチロシンキナーゼ阻害剤であるGenistein、Lavendusin A、ミトゲン活性化蛋白キナーゼ阻害剤PD98,059、Srcチロシンキナーゼ阻害剤であるPP2およびp38MAPK阻害剤であるSB202190の前処理を施した細胞においても、この応答は発現しなくなった。しかしながら、ホスフォリパーゼC阻害薬であるU-73122、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ阻害剤であるLY294002、p42/p44キナーゼ阻害剤であるU0126、JNKキナーゼ阻害剤であるSP600125の前処理によっては応答は発現した。このことから、NTSにおいてAng IIはAT1受容体と結合し、GiタイプのGTP結合蛋白質を介して、Srcチロシンキナーゼおよびp38MAPKをシグナルとして用いてL型VDCCsを活性化することが明らかになった。
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