本研究は耳下腺腺房細胞の分泌顆粒の生成・成熟過程を解明するため、膜タンパク質の局在制御機構を担う膜ドメインに焦点を当てた。H16年度はラット耳下腺分泌顆粒より膜ドメインを分離し、局在するタンパク質に特徴がないか検討を行った。まず、申請者はシンタキシン6に注目した。シンタキシン6は分泌顆粒の生合成に必要であり、さらに顆粒の成熟とともに分泌顆粒からエンドソームに移行することが知られている膜タンパク質である。このシンタキシン6の分泌顆粒からの移行が膜ドメインによって制御されており、それが顆粒の成熟に関与しているであろうという仮説を建てた。 ラット耳下腺分泌顆粒をTriton X-100を用いて膜ドメインを分離すると、シンタキシン6はガングリオシドGM1a膜ドメインに局在した。一方、Brij-58使用時シンタキシン6はGM1a膜ドメインとは別の低密度画分に回収された。このとき回収されている分泌顆粒はそのほとんどが成熟型であった。未成熟顆粒上ではどのような局在を示すか検討するため、ラット腹腔内にイソプロテレノールを投与し耳下腺内の分泌顆粒を再生させた。すると生成直後の未成熟顆粒上ではシンタキシン6はGM1a膜ドメインに回収された。さらに、時間経過にともないGM1a膜ドメインとは別の膜ドメインに移行した。これらの結果からシンタキシン6は顆粒生成時GM1a膜ドメインに局在しており、その後分泌顆粒膜上でほかの膜ドメインに移行し、顆粒から分離されるということが示唆された。今後はこの機構が分泌顆粒の成熟過程に重要な役割を持っていること、さらに各膜ドメインの詳細な脂質分析を行う予定である。
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