破骨細胞は骨組織を認識すると、蛋白分解酵素と酸を骨組織側(波状縁側)へと輸送し、さらに骨面へ分泌することにより骨吸収を行う。この蛋白質分泌はエキソサイトーシス機構により行われ、輸送小胞と細胞膜の融合が波状縁で起こる。さらに、この融合過程は、受容体の細胞膜表面への提示にも関与する。この融合の初期段階には、輸送小胞側および細胞膜側に存在するSNARE(Soluble NSF-attachment protein(SNAP)-receptor)蛋白同士の結合が必要不可欠と考えられている。我々は、SNARE蛋白質のひとつであるSNAP23に着目し、以下の研究を科学研究費補助金により行った。 1.破骨細胞の分化におけるSNAP23の関与 破骨細胞の分化にSNAP23が関与するか否かを検討した。その結果、1.骨髄マクロファージおよび破骨細胞はSNAP23を蛋白質レベルで顕著に発現していた。2.M-CSFおよびRANKLによる骨髄マクロファージから破骨細胞への分化過程をボツリヌス毒素(SNAP23阻害剤)は顕著に抑制した。以上より、骨髄マクロファージの破骨細胞への分化にはSNAP23が必要であることがわかった。 2.RANKLの下流におけるSNAP23の役割 骨髄マクロファージから破骨細胞に分化する際、細胞周期が停止することが知られている。ボツリヌス毒素による破骨細胞分化抑制は、細胞周期の停止に影響するか否かを解析した。その結果、1.M-CSFおよびRANKLによる破骨細胞分化により、cyclinD、cyclinE、cdk2、cdk4、cdk6の発現量が減少した。2.ボツリヌス毒素により破骨細胞分化を抑制すると、全ての細胞周期関連蛋白質の発現量の減少は認められなかった。以上より、SNAP23はRANKLの下流の細胞周期関連蛋白質の発現を制御していることがわかった。
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