研究概要 |
骨格の初期発生過程において、未分化間葉系幹細胞は軟骨細胞、骨芽細胞に分化誘導され、それぞれ軟骨内骨化、膜内骨化として軟骨組織、骨組織が形成される。我々は多分化能をもつマウス未分化間葉系細胞を用いて、TGF-betaの添加によって発現が誘導される1,879塩基からなる新規遺伝子CORS26を単離した。同遺伝子はマウス胎仔では将来の脊椎骨、手指骨相当部の未分化間葉由来組織、メッケル軟骨などに強い発現を示し、分泌タンパクとして初期骨格発生に重要な役割を果たしている可能性を明らかにした。さらに、CORS26遺伝子が生後マウスにおいても長管骨の成長板軟骨ならびに鼻中隔、頭蓋底の軟骨および顎関節下顎頭の軟骨増殖層といった顎顔面を含む骨格の成長に重要な部位に強く発現することを明らかにし、さらに同遺伝子がヒト第5染色体の短腕13.1-13.2領域(5p13.1-13.2)に位置することをつきとめた。同領域は、成長ホルモン受容体遺伝子に隣接することも明らかになった。また、アミノ酸配列解析の結果、分子量26kDaのCORS26タンパクは最近提唱された補体因子C1q/腫瘍壊死因子TNFグループ(C1q/TNFスーパーファミリー)に属することが判明した。また一方、CORS26遺伝子は当初は軟骨組織の分化制御に関わるだけと予想されたが、我々の最近の研究により軟骨組織が形成される以前の体節に発現が誘導されることが明らかになり、軸骨格の発生にも関わっている可能性が示唆された。
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