研究概要 |
本年度は、耳下腺および顎下腺を含む領域に放射線治療を実施する予定の頭頸部癌患者のうち、研究の趣旨および安全性について充分に説明を行い、理解と同意が得られた7名について施行した。 MRを用いて、耳下腺および顎下腺についてみかけの拡散係数(apparent diffusion coefficient : ADC)の計測とT1強調撮像、T2強調撮像を行った。撮像は放射線照射開始前と照射開始後は1週間ごとに実施した。放射線照射(外照射)は4MVのX線を用いての線量は1回2Gyにて週5回おこない、耳下腺および顎下腺の吸収線量については、3次元画像計画装置eclipse (Varian社製)を用いて算出した。唾液量の計測はサクソンテストにて、口腔乾燥の自覚についてはVAS scoreを用いてMR施行と同時に毎週計測した。照射終了後は1ヶ月間隔でfollow upしADC,サクソンテスト、VAS scoreの計測と、T1強調撮像、T2強調撮像を行った。 7症例ともほぼ同様の結果を認めた、唾液量は照射開始1週間目より急速に低下し開始3週間目よりほとんど検出が困難な量まで減少した。これに対しADCも変化していた。耳下腺のADCについては照射開始1週間目よりゆっくりと上昇し、照射開始から3-4週目でピークの値を示していた。顎下線については、照射開始2週目までADCに大きな変化はなく、照射開始3週目より急速に上昇しその後変化が緩やかになっていた。 通常のT1強調像、T2強調像では耳下腺および顎下腺に明らかな変化はみられなかった。照射終了後の経過観察期間は、現在最長で10ヶ月であるが、唾液量や口腔乾燥症状の回復はほとんどみられず、ADCの値も照射終了時よりあまり変化していない。口腔乾燥症の診断、評価についてADCの利用が有効と考えられるが、次年度も症例の蓄積と長期観察を行いながら検討を続けていきたい。
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