研究概要 |
昨年度から継続して核内蛋白の動向からみた悪性腫瘍細胞におけるアポトーシスの誘導経路について検討を重ねてきている。CDDP,MMC,DXRなどの頭頚部領域の悪性腫瘍に対して使用される各種抗癌剤、オカダ酸などの蛋白質脱リン酸化酵素阻害剤、さらには当実験室内における至適UV照射量処理を行い、その結果口腔癌を中心とする悪性腫瘍細胞にアポトーシスが誘導される事をDNAラダーフォーメーションとHoechst 33342を用いた染色により示した。アポトーシスの誘導されるに伴い正常細胞では核小体相当部位で強力にドット状に反応するAgNORsは分解され、その局在を変えた結果、核小体相当部位での強力な反応は消失した。さらにNORs構成蛋白の一つであるnucleolinは免疫蛍光抗体染色によりAgNORsと同様な変化を示した。鍍銀染色を用いたウエスタンブロッティング変法と抗nucleolin抗体を用いたウエスタンブロッティングの双方で110kDaの蛋白がアポトーシス誘導に伴い95kDaと80kDaの蛋白に分解された。これらの結果がほぼ完全に一致する事はnucleolinの動向がアポトーシス誘導の指標となりえるものであり、悪性腫瘍の各種治療による治療結果の評価や予後判定に繋がるという点においても非常に意義のある結果となっている。これらの変化は翻訳後の蛋白レベルでの変化である事が示唆される。現在、RNAiを用いた実験系をさらに精度を上げて構築中であり、核内蛋白のアポトーシス実行機構との関わりについて検討を重ねている。核内蛋白アポトーシス実行機構との関わりとその役割の詳細な検討を行っている。
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