研究概要 |
SPARCは,当初骨特異的蛋白質として見い出された分子量43,000の糖タンパク質である.最近では,癌の進展やアポトーシスに関連する機能が報告されているが,抑制と促進という相反する結果が報告されている.本研究「癌細胞のへ転移におけるSPARCの役割」は,3年計画でSPARCの臓器特異的転移への関与を検討するための1年目に当たる.今年度は,SPARCノックアウトマウスを用いて,宿主の内在性SPARCの有無が,与える臓器特異性転移について確認実験を繰り返し,現象の再現性を調べた.マウスが幼弱〜思春期(4〜8週齢)には,肺への転移頻度は,Wild Type(WT)マウスで高く,骨転移は,SPARCノックアウトマウスで高かった.肺転移の頻度が高い順の組み合わせは,マウス(WT)×SPARCセンスコントロール細胞,マウス(WT)×SPARCアンチセンス導入細胞,マウス(ノックアウト)×SPARCセンスコントロール細胞,マウス(ノックアウト)×SPARCアンチセンス導入細胞.一方,20週齢くらいになると,両方の頻度に差異は見られなくなった.SPARCノックアウトマウスのphenotypeで最も顕著なものは白内障であり,この発症は高齢で顕著に見られる.しかし,今回の私達の結果は,SPARCの影響は,宿主の若い時に見られるもので,相反する報告の多くは,宿主の週齢による可能性も考えられ,次年度以降の研究課題とした.
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