研究概要 |
1)Peptostreptococcus anaerobius biofilmsの酸素耐性 In vivoにおいて細菌は生体自身やカテーテルなどの医療材料に付着、定着し、glycocalyxと呼ばれる菌体外多糖を産生しbiofilmを形成することにより菌単独の場合よりもはるかに抵抗性を獲得する。そのため、in vitroにおいて十分な殺菌力が認められる抗菌剤を用いてもしばしば再燃を繰り返し難治化することが問題となっている。本実験は偏性嫌気性菌がbiofilmを形成することにより酸素に対してどの程度抵抗性を獲得するかを検討した。 少量の液体培地が細菌叢に供給されるよう工夫した人工biofilm modelを作製し、難治性根尖病巣からしばしば検出されるPeptostreptococcus anaerobiusを嫌気グローブボックス中でTSB培地を供給しながら培養し細菌ろ過膜上にバイオフィルムを形成させた。バイオフィルム形成後TSB培地をリン酸緩衝液で置き換え、好気条件下で大気への被爆による細菌の生死を蛍光染色し共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析したところ以下の結果を得た。 a)Peptostreptococcus anaerobiusを始めとする偏性嫌気性菌の一部の菌は生体活性により蛍光を発する蛍光色素(SYTO9)で染色されない。そのため本実験ではPIと位相差像を組み合わせて生存率の判定を行った。 b)24h後の酸素耐性(生存)率は、biofilmにおいて96.2%、floating bacteriaにおいて66%であった。このことはPeptostreptococcus anaerobius biofilmは、高い酸素耐性をもち、また難治性根尖病巣において多くの細菌はbiofilmを形成することで抵抗性を亢進するため現在広く行われている根管治療法では除菌されない症例が存在する可能性があり、効果的な破壊法をin vitro, vivoを通じて確立、応用することが必要である。
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