本研究は、多分化能を有する骨髄由来の未分化間葉系幹細胞(MSC)ならびに歯髄細胞をコンカナバリンA(ConA)処理することにより、(1)強い石灰化能の誘導がなされるか否かについて、(2)細胞が担体と強い結合が維持されるか否かin vitroにおいて検討した。 (1)イヌの腸骨骨髄、歯槽骨骨髄由来のMSC、ならびに歯牙より採取した歯髄細胞をConAで処理し、石灰化能について検討した。歯髄細胞は、アリザリンレッド染色、ALPase活性及びCa含量の測定を行ったところ、ConA処理した群は、無処理の対照群に比べ、約1.5-2倍程度の促進効果を認めた。MSCは、再三にわたり培養を行うが、培養途中で細胞層が浮遊してしまい、評価は不可能であった。そこで、ヒトの腸骨ならびに、歯槽骨骨髄より採取したMSCを用いて同様の実験を行ったところ、アリザリンレッド染色、ALPase活性及びCa含量は、ConA処理した群が、無処理の対照群に比べ、約2-3倍程度の促進効果を認めた。 (2)MSC、歯髄細胞をConAで処理後、0.2%コラゲナーゼを含むDMEMにてインキュベートし、経時的に浮遊した細胞数をコールターカウンターにて測定した。ConA無処理の培養系では、いずれの細胞においても、4時間後に半分程度、12時間でほぼ完全に細胞は遊離したのに対して、ConA処理群では、いずれの細胞においても濃度依存的に遊離が抑制され、ConA10μg/ml添加では24時間後においてもほとんど遊離しなかった。 これらの結果より、ConAはMSCならびに歯髄細胞の石灰化を促進することが判明し、細胞と担体の結合を強固にしうることが示唆された。今後、in vivoにおいてもこれらのConA作用を確認するとともに、MSCにより迅速で量的・質的に良好な象牙質の形成が実現できる至適条件を検討する予定である。
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