多分化能を有する未分化間葉系幹細胞(MSC)をConA処理することにより、強い石灰化能の誘導がなされるか否かについて、また細胞と担体の結合が強化されるか否か、in vivoにおいて検討した。 本研究では、免疫不全マウス(C.B-17/Icr-scid Jcl)を用いて、in vivo differentiation assayによって、MSC(歯槽骨由来と腸骨由来)ならびに歯髄細胞へのConAの影響を検討した。すなわち、ConA処理(20μg/ml、3時間)または、ConA未処理のMSC、歯髄細胞をハイドロキシアパタイトと混和後、マウス背部(皮下)に埋入し、4、6、8週後に取り出し検討した。 4週においては、挿入した細胞が存在することはビメンチンによる免疫染色で確認できたが、全ての群で石灰化物の形成は確認されなかった。またハイドロキシアパタイト上の細胞の残存率はConAの処理、未処理で明らかな差は認めなかった。 8週においては、全てにおいて骨形成を認めたものの、RT-PCRによるオステオカルシン、骨シアロプロテインの骨形成マーカーにおいては、差を認めなかった。 6週においては、歯髄細胞ではConA処理群と未処理群で差を認めなかった。歯槽骨由来MSCは、ConA処理、未処理の6サンプルとも生着しておらず、ビメンチンに染色する細胞は認めなかった。腸骨由来MSCでは、ConA処理群の骨形成が未処理のものよりもわずかではあるが促進されていることが骨形成マーカーのRT-PCRによって確認できた。 ただし、遠心して細胞を担体に付着させることによる担体への細胞付着率の差、細胞と担体の混和の不均一性による薄切部位による差、細胞の継代数などに大きく影響されるためさらなる検討が必要と考えられる。また、歯髄細胞により形成された石灰化物は骨とも性状が異なると考えるが、分子生物学的な手法等により更なる検討が必要である。
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