研究概要 |
平成16年度に得られた結果に基づき二酸化チタン光触媒作用により産生される活性酸素種を利用した実際の歯牙漂白効果(臨床応用)について表記研究課題の最終目標とし以下の実験を行った。 【実験1】漂白作用の歯牙への影響 抜去歯への漂白効果の検討;これまでに得られた漂白条件を用いヒト抜去歯に対する漂白を行った。そして,効果をエナメル質の形態的変化(表面自由エネルギー)および表面性状変化を走査型電子顕微鏡(SEM)を用い検討した。表面自由エネルギーは松風Hi-Liteと比較し有意に低下しており,二酸化チタン光触媒作用を利用した新規漂白剤(Ti-TBA)は歯牙表面の濡れの低下を誘引することが考えられる。SEMによる検討では,表面性状はHi-Liteで粗造になるのに対しTi-TBAではほとんど変化は観察されなかった。 【実験2】漂白法の評価 色差計を用いた漂白評価;色差計を用いさらに評価法としてLab表色系を使用した。結果,明度を示すL値はTi-TBAによる1回処置で約1.0上昇したが,以後の処置ではL値に変化は見られなかった。また,色差を示ΔE^*abも1回処置により約3.5上昇し,色差の感覚として目立って感じられる値が得られたが,L値と同様に以後の処置では変化は観察されなかった。 本研究で得られた結果より光触媒を利用したTi-TBAは抜去歯に対して漂白効果を示した。この効果は光触媒を介し産生される活性酸素種(スーパーオキシドアニオンラジカル)によるものであることが示唆された。さらに,Ti-TBAはエナメル質表面に対し物理的な変化を与えないが濡れの向上を示すことから,漂白処置を後,唾液によるエナメル質表面の濡れの向上させ,抗う蝕効果も同時に獲得できることが示唆された。
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