コラーゲンゲルを再線維化し、アルカリフォスファターゼとフォスビチン溶液中で架橋後、6mMβ-グリセロリン酸カルシウム(β-GP)溶液に浸漬すると、アパタイト-コラーゲン複合体(以下;HAp-Col複合体)が作製できる。このHAp-Col複合体は、他のバイオセラミックスと違い、高圧、高温加熱処理を必要とせず、生体温度に近い状態で製作できるため、より生体に合致した材料となることが期待されている。しかしながら、複合体材料の物理化学的諸性質については不明な点も多く、さらに生体親和性、硬組織伝導性に関する報告はない。そこで本研究では、アパタイト/コラーゲン重量比と浸漬時間との関係を明らかにしたうえで、得られた複合体の物理化学的諸性質を検討した。さらに、実験的に根尖病巣を発症させた成犬を用いて、歯根端切除術後の骨創腔にHAp-Col複合体を填入し、生体親和性ならびに新生骨生成の様相についてエックス線撮影、三次元マイクロCT(3Dμ-CT)像ならびにH.E.による病理組織観察を行い、HAp-Col複合体の硬組織伝導性について検討予定である。 現在までの結果として、架橋処理したコラーゲンをβ-GP溶液に浸漬すると、SEM観察、TGより経日的に無機析出量が増大することが明らかとなった。析出量の増大は、視覚的には透明感を有する試料が白色化することにより、またエックス線写真においては不透過性の向上より判定できた。さらに、その析出物は、X線回折、FT-IRからアパタイトであることが明らかとなった。また、経日的に骨様アパタイト量が増大し弾力性を有する硬組織様複合体となることがわかった。 現在、生物学的骨置換材として、HAp-Col複合体を生体内に応用し、歯根端切除後の骨創腔に填入し臨床応用への有用性の確認、さらには生体親和性ならびに新生骨生成の様相の確認を行う最中である。
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