平成17年度 実験動物には、生後8週齢のウイスター系雄性ラットを用いた。動物は、エーテル麻酔下にて、下顎左側第一臼歯をラウンドバーにて歯髄穿孔後、そのまま6週間放置し根尖病変を形成した。その後、Kファイルにて#25まで根管拡大後、次亜塩素酸ナトリウムにて洗浄し、低粘性レジン(ユニフィルフロー)にて仮封する。術後、4週、6週および10週後に屠殺し下顎骨を摘出した。その後、下顎骨はEDTA-グリセリン溶液で低温脱灰を行った。脱灰後、下顎骨をOTCコンパウンドに包埋し、連続切片を作製した。作製した切片は、HE染色を行い光学顕微鏡にて観察した。 その結果、術後4週では、根尖部に依然として膿瘍形成がみられたが術後1週、2週に比較して縮小していた。根尖孔直下の歯周組織には好中球およびマクロファージが多数認められた。しかし、術後1週、2週に比較してその数は減少していた。 術後6週では、根尖部の膿瘍はさらに縮小して根尖部付近に限局していた。また膿瘍周囲の肉芽組織は繊維化傾向が認められた。さらに根尖部における新生セメント質および歯槽骨の添加は術後4週に比較して添加傾向を示した。 術後10週では、根尖部の膿瘍はさらに縮小傾向を示し、術後10週経過例ではわずかに認められただけであった。また、術後6週経過例と同様に新生セメント質および歯槽骨の添加傾向を示した。さらに、新生添加した歯槽骨およびセメント質との間に存在する歯根膜は正常な幅を示す傾向が認められた。 よって根管拡大後、根尖部歯周組織は実験期間を通して徐々に治癒し、それに伴って根尖部セメント質および歯槽骨が添加されていることが観察された。今後はこの実験モデルを用いて根尖部歯周組織の治癒や根尖部セメント質の添加のメカニズムをアルカリフォスファターゼ染色やTGF-β1などのGrowth Factorの動態を免疫組織学的に検索していく予定である。
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