16年度〜17年度 対照群の作成: JCLウイスターラット(15匹)を実験開始日に下顎左側第一臼歯の歯髄を実験的に露出させて、#15->#25のH Fileにて長さ5mmで抜髄処置を行った。その後1週間開放のまま放置し、感染根管を作成した後、#30 H Fileで感染根管処置を行い、既存の貼薬剤であるクロラムフェニコール、ヨードホルム、水酸化カルシウム(カルシペックス)を各5匹に貼薬し、グラスアイオノマーセメントで仮封した。さらにその1週間後屠殺し、動物は通法に従い連続組織切片を作成後H.E.染色し、根尖部歯周組織の状態を病理組織学的に光学顕微鏡下にて観察し、コンピューター画像解析装置を使用して組織形態計測学的に検索した。 実験群の作成: 自然発症糖尿病ラット(GK Rat)(30匹)を使用して、実験期間中30%シュクロースを与えないGK-A群(15匹)と与えるGK-B群(15匹)に分けられた。両群の動物はすべて対照群と同様の処置を行った。 対照群の全ての貼薬群において根尖性歯周炎が形成されていることが確認され、その内部には軽度から中等度の炎症性細胞浸潤が認められた。組織形態計測学的な比較において、各貼薬群の根尖病変の大きさに有意(P<0.01)な差は認められなかった。GK-A群において、水酸化カルシウム貼薬群はヨードホルム貼薬群に比較して組織形態計測学的に有意(P<0.01)に根尖病変の面積は拡大していたがクロラムフェニコール貼薬群に対しては有意(P<0.01)な差は認められなかった。GK-B群において、水酸化カルシウム貼薬群はヨードホルム貼薬群とクロラムフェニコール貼薬群に比較して有意(P<0.01)に根尖病変の面積は拡大していた。またGK-A群、GK-B群共にヨードホルム貼薬群とクロラムフェニコール貼薬群の間には有意(P<0.01)な差は認められなかった。 上記のIn Vivoの結果より、常に難治性であり、良い結果が得られる可能性の低い糖尿病患者の感染根管治療において、その根管貼薬の選択が(1)ヨードホルム、(2)クロラムフェニコールであることが推奨され、今後、臨床医の手助けとなる可能性が高い。
|