単層・多層、太さや長さ、表面の性質(酸化型、水溶性等)の各種カーボンナノチューブ原料として、始めに直径30nmの多層カーボンナノチューブを選択し、人工複合糖質高分子による表面修飾を検討した。人工複合糖質高分子としては、主鎖骨格がポリスチレン型およびポリアクリルアミド型を選択し、また糖脂質型のものを用いた。分析のためこれらの蛍光ラベル化された人工複合糖質高分子を用いカーボンナノチューブと相互作用させ、余分な人工複合糖質高分子を除去した後に共焦点レーザー顕微鏡にて観察を行った。その結果、ポリスチレン型の人工複合糖質高分子を用いた場合、最も強くカーボンナノチューブに吸着し、容易に表面修飾が達成できることが分かった。また、表面に吸着した糖鎖の機能を調べるため各種レクチンを用いて結合試験を行った結果、糖鎖構造に対応するレクチンによる選択的な結合が観察された。一方、主鎖骨格がポリアミド型や脂質型の人工複合糖質高分子では、比較的弱い結合にてカーボンナノチューブへ吸着するものの、レクチン結合試験では選択的な結合は観察されず非特異的な吸着が観察された。これらのことよりポリアミド型や脂質型ではカーボンナノチューブの表面へ吸着されるものの、その吸着力が弱いため余分な人工複合糖質高分子を除去する際に部分的に脱離してしまうことが推測される。その結果としてカーボンナノチューブ自身の表面が溶液中に露出され、糖鎖の認識ではなくカーボンナノチューブが本来持つ強力な吸着能力によりレクチンを非選択的に吸着してしまったと考えられる。 以上の結果より、カーボンナノチューブの表面修飾のためには主鎖骨格がポリスチレン型の人工高分子が適切であることが判明した。
|