被験者は8名(男性4名、女性4名、年齢24から45歳)とし、覚醒時に実験を行った。被験者は、下顎第一大臼歯舌側に圧力センサーを埋め込んだスプリントを下顎歯列に装着し、両側側頭筋、咬筋、顎二腹筋後腹の筋電計をそれぞれ装着した。圧力センサー、筋電計からの信号はそれぞれ増幅器で増幅し、パーソナルコンピュータで経時的に記録を行った。被験者は舌を圧力センサーに押し当て、コンピュータ画面上に表示される舌圧値のグラフをビジュアルフィードバックとして用いてその状態を6秒間維持させた。これらの動作を、下顎安静位および中心咬合位の2つの下顎位において、左右6回ずつ行った。舌運動を行っている間の、各被験筋筋電図のRoot mean squareとAREAをそれぞれ計算し、平均値を求めた。 舌運動を行っている間の筋活動は、すべての被験者でほぼ同様の動態を呈した。両側顎二腹筋後腹は、咬合接触時、安静時ともに、舌運動に一致して有意な筋活動を示した。両側咬筋、両側側頭筋は、安静時にはほとんど活動を示さなかったが、咬合接触時には舌運動に一致して有意な筋活動を示した。以上の結果から、舌運動が咀嚼筋筋活動を惹起するトリガーとなっている可能性が示唆された。 本研究では、舌運動時に有意な阻嚼筋筋活動を認めたが、その際に咬合力に関しては記録を行っていない。認められた筋活動が舌運動に起因するのか、ただ単に咬合力がかかったからなのかは、今後調査を行いたい。 来年度は、睡眠時に舌位を変化させるスプリントを装着し、同様に筋活動について記録し、考察を行う予定である。
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