研究概要 |
骨形成メカニズムに関する研究が急展開を見せている今日,細胞の増殖・分化制御に関する接着タンパクであるカドヘリンを介する情報伝達系が骨原性細胞の分化を誘導する鍵となる可能性が示されている.一方,線維芽細胞増殖因子(FGF)は軟骨細胞や骨芽細胞など様々な間葉系細胞の増殖を促進することが知られているものの,FGFが骨芽細胞の増殖・分化の制御にどのように関与しているかについてはいまだに不明である.そこで本研究では,FGFスーパーファミリーが骨芽細胞の骨再生能に及ぼす影響をカドヘリン遺伝子の発現動態から分子生物学的に解明することを目的とし,研究を計画した.10%FCS含有α-MEM培地中に0,1,2.5,5,10,25,50,100ng/mlのrhbFGFを添加し,それぞれの培地に骨芽細胞(MC3T3-E1)を3×10^4cells/mlで播種し,10日間培養した.1,3,5,7,10,日目の細胞数をコールターカウンターを用いてそれぞれ計測し,比較検討を行った.その結果,25ng/mlより高濃度のFGF添加群では5日目からの細胞増殖が抑制されたのに対し,5ng/ml以下のFGF添加群では10日目まで増加し続ける傾向が見られた.5ng/ml以下のFGF添加群の中でも1ng/mlと2.5ng/ml添加群では特に著しい細胞増殖の促進が認められた.一方,増殖初期である培養3日後までの細胞数に関しては1ng/ml群と比較し,2.5ng/ml群の方が有意に高い傾向を示した. 以上より,bFGFは骨芽細胞の増殖を促進させる作用を有し,in vitroにおけるbFGFの至適濃度は2.5ng/mlであることが示唆された. 次年度は上記の結果をふまえ,bFGFを添加し培養した各時期におけるカドヘリン発現量を検討し,bFGFの投与がカドヘリンを介した骨芽細胞の増殖・分化におよぼす影響を明らかにする予定である.
|