研究概要 |
唾液中のムチン濃度は,若年者,高齢者,要介護高齢者群の順に高い値であった.このことにより,唾液の粘性が高まり,唾液が口腔内に停滞しやすい状態であると考えられる.また,唾液中の,ムチン濃度とカンジダの検出数との間の関係では,若年者および高齢者群では大きな関係は認められなかった.しかし,要介護高齢者群では両者の間に正の相関が認められた.カンジダは誤嚥性肺炎原因菌と共凝集することが知られており,免疫機能の低下した要介護高齢者では,ムチン濃度の上昇は誤嚥性肺炎のリスクを高めていると考えられる. 唾液中のアルブミン濃度とカンジダの検出数との間の関係では,若年者,高齢者,要介護高齢者ともに両者の間に大きな関係は認められなかった.しかし,唾液中のアルブミン濃度は若年者,高齢者,要介護高齢者群の順に高くなっており,栄養状態および免疫機能の低下と唾液中のアルブミン濃度との間には何らかの関係があるのではないかと考えられる. 唾液中のヒスタチン濃度とカンジダの検出数との間の関係では,若年者および高齢者群では大きな関係は認められなかった.しかし,要介護高齢者では両者の間に正の相関が認められた.ヒスタチンは抗カンジダ作用を有しており,カンジダ数の増加に伴いヒスタチン濃度が増加したのではないかと考えられる. 平成17年度は,更に被検者数を増やすとともに,ムチン濃度,アルブミン濃度,ヒスタチン濃度,HBD-2濃度,カンジダの検出数,および栄養状態との間の関係を分析し,カンジダ,ムチン,アルブミンに注目した唾液評価が高齢者の健康指標となるかどうかを検討する予定である.
|