研究概要 |
本研究の目的は,三次元有限要素法を用いて,ガラス繊維補強型高分子材料(FRC)をクラスプへ応用する上での適正な形態を構造力学的立場から明らかにすることである. 我々の教室では,FRCの利点に着目し,FRCを部分床義歯のクラスプとして臨床応用することをめざして機械的性質を検討するための基礎実験に加えて,すでに数例において臨床応用も試み始めている.しかし,これまでの研究において,強度的には臨床応用が可能である結果を得ているが,臨床応用例において,応力が集中すると考えられる部位でのコーティング層の剥離等のトラブルも経験しており,FRCの物性に適した形態の検討が必要であると考えた.そこで,三次元有限要素法を用いて,FRCをクラスプへ応用する上での適正な形態を構造力学的に検討することにした. 平成16年度は,FRCグラスファイバー部の異方性材料としての材料特性を定義するために,グラスファイバーの走向方向に直角な方向の弾性率を実測したところ,メーカーが公表しているグラスファイバーの走向方向の弾性率から予測される値よりかなり小さい値を得た.そこで,平成17年度は,グラスファイバーの走向方向の弾性率およびマトリックスレジン単体の弾性率の実測を追加し,今回得られたグラスファイバーの走向方向に直角な方向の弾性率の妥当性を検証する予定である. 一方,有限要素解析のためのモデル作製については,三次元形状および三次元有限要素メッシュを効率よく扱うために豊富な機能を備えたソフトウェアを購入し,まず床内固定されたFRCクラスプを想定した形状の作成とその要素分割を行った.現在のところFRCクラスプ部は単純な棒状試験片様の形状であるが,平成17年度はエーカースタイプの形状を作成し,実測して得た異方性材料特性を代入して応力解析を行い,FRCエーカースタイプクラスプの適正形態を求める予定である.
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