本研究は口腔内で装着し長期間経過したレジンに対する補修時の最適な表面処理について明らかにすることを目的とする。レジンの劣化はおもに水中浸漬により生じ劣化していないレジンと比較して接着強さの低下が予想される。そこで短期間で評価を行うために、急速劣化試験として熱サイクル試験を採用し、劣化したレジンに対する各表面処理が接着強さに及ぼす影響について比較検討を行った。 本研究では、口腔内で装着し長期間経過した間接修復用コンポジットを想定し、市販の6種類の間接修復用コンポジットを使用した。熱サイクル試験を負荷した間接修復用コンポジットに対して各表面処理を行い、臨床で想定される2種類の補修法にて追加築盛(1)固定性修復物に対し口腔内を想定し修復用コンポジットレジンによる補修(直接補修法)および(2)可撤性修復物に対し技工室を想定し歯冠用コンポジットレジンによる補修(間接補修法)を行った。 接着試験法については曲げ接着試験を選択し、3点曲げ試験により接着強さを測定し劣化による影響について比較検討を行った。 接着耐久試験として、接着後に熱サイクル試験を負荷することで接着耐久性の評価も行った。 熱サイクルによってレジン自体の曲げ強さが有意に低下した。表面処理としてはシラン処理の効果が低下する傾向を示した。これは吸水することによりレジンマトリックスおよびフィラーとの結合が加水分解により劣化したこと、吸水したマトリックスレジンによりシラン処理の効果が低下したことにより、接着強さの低下が生じたものと考えられる。 コンポジット材料への接着強さの向上にシラン処理が特に有効である。しかし、コンポジット材料およびシラン処理剤の種類によって接着強さを向上させる効果が異なることが明らかとなった。 劣化したコンポジット材料に対する影響では、水中浸漬が最も大きく、熱サイクルではその影響を加速することが明らかとなった。
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