研究概要 |
口腔乾燥を訴える患者が増加し,現代病として取りざたされることが多くなった.これらは唾液腺の器質的障害を持つ疾患に限らず,現代社会における慢性的なストレス,慢性疾患や精神疾患により服用する薬剤の副作用により器質的障害がみられずとも唾液分泌量の低下がある症例がしばしばみられる.また,唾液分泌量の減少はみとめられないが,口呼吸等により口腔内に乾燥所見を呈す場合も多い.唾液腺に器質的障害を持たない口腔乾燥においては可逆的な唾液分泌の増加が期待でき,薬剤副作用やストレスなどが原因の場合は,その原因の除去とともに,味覚刺激や積極的な咀嚼運動により唾液分泌促進が期待される. 口腔乾燥症の原因のひとつである,口腔周囲筋の廃用性の機能低下に対し,臨床において筋機能療法を応用することにより改善がみられることが知られている.本研究ではその効果判定を目的とし,筋機能療法をおこなう前後における有効な判定指標の確立を模索する. 本年度は測定システムの構築を主とした.具体的には, 1)測定器機の精度検証,測定項目および被検項目の検証, 2)被検データの再現性の検証, 3)対人的検査にむけた安全性の検証 を行っている. 外来診療のデータより,口腔周囲筋の機能低下のうち不充分な口唇閉鎖が多いと類察され,その検証として口唇閉鎖圧の測定と評価が必要と考えられた.既知の文献から推察される測定圧のレンジから,口腔での使用が前提となるため耐水処理を施した圧力センサーを試作し,再現性,耐久性,安全性の点について基礎的実験を行っている.特に臨床データ採取の際の再現性,安全性のための測定システムの改良をおこなっている.
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