研究概要 |
Tissue Engineeringには組織・器官の形態と機能を再生するための細胞,細胞の分化・増殖を制御するサイトカインと細胞を培養するための最適なscaffoldが必要である. われわれはこれまで,in vitroにおいて骨形成因子(BMP)を用いて未成熟筋組織から軟骨組織誘導を試みており,その際のscaffoldとしてコラーゲン膜,PLGA膜,e-PTFE(expanded-polytetrafluoroethylene)膜を用いた.特にe-PTFE膜をscaffoldとした場合には良好な結果を得ることができたことから,以降の実験ではe-PTFE膜のみをscaffoldとして用いている.さらに,その後の継続した実験過程において,軟骨組織が誘導されている部位とは違う部位に類骨組織と骨芽細胞様細胞が誘導されているのを発見した.従って現在は,未成熟筋組織からin vitroで骨組織誘導を試みている.その方法として,まずは培養液の組成を変えた.即ち,これまでは標準培養液としてCMRL-1066を用い,そこに15%FBSを加えた培養液を使用していたが,標準培養液にα-MEMを用い,さらに15%FBS,10mM β-グリセロリン酸,アスコルビン酸を加えた培養液を使用している.その結果,H-E染色による組織観察において,一部に類骨組織と骨芽細胞様細胞が観察された.I型コラーゲンの免疫染色では類骨組織部が強く染色されていた.一方,RT-PCRを用いた遺伝子発現実験において,オステオカルシンの発現量は少なかったものの,I型コラーゲンとオステオポンチンの発現量は培養期間中増加していた. 平成18年度は誘導された組織が本当に骨系の組織であるかを確証するために,オステオポンチンおよびオステオカルシンの免疫染色を追加し,さらにRunx2やOsterixの遺伝子発現の有無を確認する予定でいる.
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