研究概要 |
様々な組織に存在するヒアルロン酸(HA)の働きは多様であるが、外因性HAの骨欠損部に対する効果を検索するために、今回、培養骨芽細胞様細胞に対する種々の影響を調べた。 全実験で用いた細胞は骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)、HAは分子量6-12x10^5のアルツディスポ(生化学工業)である。 1.増殖能:培養プレートに骨芽細胞を播種し、培地に0.1, 1.0mg/mlのHAを添加し、通法どおり培養を行い、3,4,7日後の細胞数をCellTiter96^秒で処理後、490nmの吸光度で測定した。その結果、いずれの日数でも1.0mg/mlのHA添加群で、非添加群と比較して有意に増殖を示した(p<0.01)。 2.移動能:蛍光色素で標識した骨芽細胞をフルオロブロックインサート(ポアサイズ8μm)の上層へ入れ、下層に0.1, 1.0mg/mlのHA添加培地を入れ、ボアを通過した細胞の蛍光を検出した。その結果、下層に1.0mg/mlHAを入れた方が、ポジティブコントロール(FCS10%)と比較して有意にフィルター下層に細胞が移動していた(p<0.01)。 3.コラーゲンゲル収縮能:0.3% I型コラーゲンを用い、細胞包埋コラーゲンゲルを作製し、培地に0.1, 1.0mg/mlのHAを添加し、通法どおり培養を行った。7,14日後のゲル収縮率を測定したところ、1.0mg/mlのHA添加群で、非添加群と比較して有意に収縮を示した(p<0.01)。 骨欠損部における骨芽細胞の動態でまず初期に起こる細胞移動・増殖は、HA添加によって亢進されることが分かった。 また、生体と同じ3次元をin vitroで再現できるコラーゲンゲル培養の収縮は、HA添加で有意であった。これは、創傷治癒過程における創の収縮を模倣しているが、これより骨新生にともなう骨のリモデリングにおいてHAが関与していることが示唆された。
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