新潟大学医歯学総合病院では、現在までに多数の歯の移植術を施行しており、成功率は90%を超えている。しかし、その対象のほとんどが移植歯の抜歯と移植を同時に行う「即時移植」である。即時移植は、健康な移植歯と移植床が同時に存在する必要があり、これが歯の移植の適応症を制限している。そのため私達は、歯を一時的に保存して移植する「歯の凍結保存と凍結保存歯の移植」について研究を進めている。その研究の一環として、凍結保存をした移植歯の歯周組織再生機構を明らかにするため、ラット臼歯を4週間凍結保存して腹部の皮下に移植し組織化学的に観察した。その結果、凍結保存歯は、抜歯直後に腹部皮下へ移植した歯と比較すると、若干の遅延はあるがほぼ同様な歯槽骨を含めた歯周組織の再生過程を示すことが明らかとなった。この結果は、現在論文投稿準備中である。 上記の研究結果をもとにして、実際の臨床に即し、より長期間凍結保存したラット移植歯のモデルを用いて、歯周組織の再生機構を形態学的に検索した。4週齢のWistar系雄ラットの上顎第一、第二臼歯を抜歯後、プログラムフリーザにて緩速凍結した後、ディープフリーザ(-80度)に6ヶ月凍結保存した。その後解凍し、腹部の皮下に移植した。皮下に移植後、1、2、4週目に摘出、固定した。対照群は、抜歯後すぐに腹部の皮下に移植し、1、2、4週後に摘出、固定した。パラフィン切片を用いて、ヘマトキシリン、エオジン染色を施して観察したところ、6ヶ月凍結保存した移植歯は、抜歯直後に腹部皮下へ移植した歯と比較すると、遅延はあるが歯槽骨を含めた歯周組織の再生を示した。しかし、4週間凍結保存した移植歯と比較しても、若干の遅延を示していた。この結果は、6th Asian Congress on Oral and Maxillofacial Surgery・第49日本口腔外科学会総会(千葉)で発表した。
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