方法:Fischer系5週齢雄性ラットの大腿骨から骨髄細胞を採取して多孔性β-TCPブロック(オスフェリオン)に播種した。多孔性β-TCPブロックは、昨年度の研究で何種類かの生体材料を用いて培養骨を作製した際に、操作性がよく、骨の形成状態も良好であったため選択した。細胞を播種する際に、多孔性β-TCPブロックの中央部にまで細胞がうまく入り込むように播種の方法を工夫した。その後、β-グリセロリン酸、デキサメタゾン、アスコルビン酸を添加して骨芽細胞様細胞への分化を誘導しながら3週間培養した。この骨髄細胞・β-TCPブロック複合体を同系7週齢雄性ラットの背部皮下に移植して実験群1とした。添加剤を加えずに培養した複合体を移植した群を、実験群2とした。対照群として培養液に浸漬したβ-TCPブロックのみを移植した。移植後6週目、12週目に複合体あるいはブロックを摘出し、ホルマリン固定して脱灰後にパラフィン切片を作製し、HE染色および免疫組織化学染色をおこない、光学顕微鏡で組織学的に観察した。結果:実験群1ではブロック孔表面に骨組織が比較的均質に広範囲に形成されており、骨の表面には骨芽細胞が多数認められた。また、破骨細胞も認められ、周囲の結合組織中には毛細血管も侵入していた。実験群2ではブロック孔表面に骨髄細胞由来と思われる細胞の増殖が認められ、一部でわずかに骨組織が認められたが、対照群ではブロック孔表面には細胞成分はほとんどなく骨の形成は認められなかった。結論:骨芽細胞様細胞へ分化誘導した骨髄細胞・多孔性β-TCPブロック複合体では活発な骨形成が認められ、顎骨移植材料として有用と思われた。
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