新潟大学医歯学総合病院口腔外科顎顔面外科診療室においては、口蓋裂児に対して1996年からFurlow法によるHotz床併用二段階口蓋形成手術法を施行している。今回、本法を施行した唇顎口蓋裂児の口蓋形成終了時までにおける言語獲得経過について調査した。 [対象]同科にてFurlow法によるHotz床併用二段階口蓋形成手術法を施行した症例で、軟口蓋形成術以前の早期から定期的に言語管理が可能であった37例であった。軟口蓋閉鎖手術時期は平均1歳6か月で、全例同一術者により施行された。軟口蓋形成手術後に残遺した硬口蓋部の破裂に対しては硬口蓋閉鎖床を装着した。硬口蓋閉鎖手術時機は平均5歳8か月であった。なお、明らかな精神発達遅滞または中等度以上の難聴があるものは除外した。 [方法]判定時期は4歳時、5歳時、硬口蓋閉鎖術前術後とした。鼻咽腔閉鎖機能については、母音発声時と会話音声の開鼻声の評価、ならびにKAY社製ナゾメーターIIモデル6400を介して母音・子音・文章課題の鼻腔共鳴量を算出し、KAY社製コンピュータスピーチラボCSL4400に取り込んで分析し、評価を行った。さらに、子音構音時およびブローイング時の呼気鼻漏出の程度を評価し、これらにより良好、軽度不全、不全の3段階で総合的に判定した。構音については音節、単語、文章、会話により聴覚的および視覚的に判定した。 [結果]鼻咽腔閉鎖機能を経年的に観察すると、「良好」例は4歳時15例40.5%、5歳時25例67.6%、硬口蓋閉鎖術前26例70.3%、術後31例83.8%であった。ナゾメーターによる評価では、各課題の平均鼻腔共鳴量は経年的に低値を示しており、t検定の結果、有意差は4歳時と5歳時の/i/発声時のみ認められた。正常構音の獲得例は、4歳時7例18.9%、5歳時14例37.8%、術前術後では23例62.2%であった。鼻咽腔閉鎖機能および正常構音獲得について経年的推移をみると、鼻咽腔閉鎖機能は4歳から5歳にかけて改善がみられたが、正常構音の獲得は5歳以後に改善がみられ、硬口蓋閉鎖術前後では変動は少ないと考えられた。
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