研究概要 |
培養骨膜シートをイヌ下顎骨体部より採取した骨膜組織片を培養し作成し研究に用いた。培地にはM199に血清、抗生剤、アスコルビン酸を加えたものを用いた。シートは約100μmの厚みを有し、細胞及び細胞外基質より構成され、十分縫合に耐えうる強度と伸展性を備えてた。この培養骨膜シートの性質の把握するためALP, type I collagen, type II collagen, osteopontin, osteonectinに対する免疫染色を行い、正常骨膜組織と比較した。その結果、培養骨膜は正常骨膜と非常に近い構造と性質を有していることが明らかになった。次に培地中におけるALPの経時変化を測定し、移植に適した条件の検討を行った。 移植実験では犬下顎歯槽骨欠損モデルの作成を行い、自然修復しない欠損モデルの検討を行った後、培養骨膜シートの移植を開始した。大動物を用いた移植実験の場合、移植手技の向上が、実験結果の公正な評価には不可欠である。従って、歯槽骨欠損モデルの作製および移植手技の安定を目標とした予備実験を開始した。これらの移植実験にて培養骨膜移植にて下顎歯槽骨の歯根分岐部骨欠損の再生が確認された。他の人工材料では修復困難とされてきた歯根分岐部の貫通型骨欠損が完全に再生されたことは、歯科領域、特に歯周病治療において非常に大きな意味を有するものである。この再生骨の評価には組織学的検討のほか、マイクロCTを用いた。またこの培養骨膜の凍結保存法の検討も合わせて行った。凍結培地と凍結条件の比較検討を行い、培養骨膜が凍結解凍後も骨形成能を有していることを確認した。この成果は第7回国際組織工学会(10月、スイス)にて発表した。またここまでの成果をTissue Engineering誌に2本投稿中である。
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