研究概要 |
変形性関節症は現代社会の高齢化により先進国ではその有病性の高さが注目されている。しかしながら現在変形性関節症の治療は主に対症療法が行われており、根本的治療法は今だ開発されていない。志茂らはマウス軟骨細胞関節炎モデルでレチノイドレセプターアンタゴニストが変形性関節炎の新たな治療法になることを見つけたので報告する。 関節軟骨の変性、破壊には軟骨細胞分化マーカーの異常発現や基質分解の異常な亢進が引き起こされる。一方レチノイドは軟骨細胞に作用して種々の最終分化マーカーや基質分解酵素の発現を誘導することが知られている。そこで志茂らは変形性関節症において、もしレチノイドが用いているようなシグナルの異常な経路があるならば、そのシグナルをレチノイドレセプターアンタゴニストを用いて軟骨変性が抑えられるのではないかと考えた。In vitro関節軟骨モデルとしてATDC5細胞を用い、ITSで刺激後10日目でアグリカン、II型コラーゲン発現が確認でき、以下の実験をこの条件で行った。軟骨細胞をIL-1βで刺激すると軟骨基質の構成成分アグリカン、II型コラーゲンmRNAレベルは減少し、軟骨基質分解酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-3,9,13)mRNAは上昇することが明らかとなった。軟骨細胞をIL-1βで刺激すると同時にアンタゴニストで処理すると濃度依存的にMMP-3,9,13mRNA発現は低下し、軟骨基質の破壊が抑制されていることが明らかとなった。アルシャンブルー染色においてもIL-1βで誘導された軟骨基質の分解はアンタゴニストによってレスキューされていることが明らかとなった。以上の結果からレチノイドレセプターアンタゴニストは変形性関節症におけるプロテアーゼによる関節破壊に対して有効な治療法となると予想される。
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