研究概要 |
当教室において樹立した口腔扁平上皮癌細胞であるBHY、B88、HNt細胞とSCC9細胞を用いて本研究は行った。プロテアソーム阻害剤(PS-341;USAにて多発性骨髄腫の治療薬として最近認可された分子標的薬)は濃度依存的に(0.1から100nM)癌細胞の細胞増殖能を抑制した。至適濃度を決定後、プロテアソーム阻害剤を本研究に用いた。プロテアソーム阻害剤は濃度依存的に癌細胞のNF-κB活性を抑制した。癌細胞を放射線照射(15Gy)することにより、Akt及びIKKはリン酸化され、それらのシグナルを介しIκBαはリン酸化、ユビキチン化とプロテアソームによる分解を受け、NF-κBは活性化されることをElectrophoretic mobility shift assay、Luciferase assay、Western blotting法および蛍光抗体法にて明らかにした。プロテアソーム阻害剤(1,5,10nM)で癌細胞を前処理後、放射線照射(15Gy)することにより、NF-κBの活性化は抑制された。それぞれの単独処理群に比較し、前処理することにより、in vitroにおける細胞増殖能は相乗的に抑制され、同時にアポトーシスの誘導も相乗的に増強された。また、癌細胞を放射線照射(15Gy)することにより、NF-κBの下流に存在するIL-1α、IL-6、IL-8及びTNF-αの産生をELISA法で測定した結果、放射線により増加したサイトカインの産生はプロテアソーム阻害剤の前処理により有意に抑制された。ヌードマウスの背部皮下に癌細胞を移植し、100mm^3の大きさになった後に、放射線(1.5Gy/day、3回/週)単独、プロテアソーム阻害剤(3回/週、iv)単独、或いは両者を併用し、経時的な腫瘍体積を測定した結果、それぞれの単独治療に比較し、両者を併用することで有意に相乗的な腫瘍体積の減少を認めた。 以上より、口腔癌に対しNF-κBを分子標的としたプロテアソーム阻害剤治療及び放射線との併用療法が有効である可能性が示唆された。
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