研究概要 |
口腔扁平上皮癌の治療においては,5-FU系薬剤が広く普及している.5-FU系薬剤がその治療前に有効であるか否かを知ることができれば,治療上有意義であるし,また,そのメカニズムについて研究しておくことは重要である.これまでに口腔癌症例における5-FUの代謝に関係する酵素であるTSとDPDの発現について免疫組織化学的に検討し,その結果,組織学的に悪性度の高い腫瘍がTSの発現が高いこと,また,少数症例ではあるが,扁平上皮癌における検討結果でも,TSが細胞増殖と関係していること,およびDPDが治療効果に関与している可能性があることを明らかにしてきた. 本年度は,5-FU系薬剤単独で治療を行った症例群と5-FU系薬剤を含む他剤併用療法を行った症例の生検検体を用いて免疫組織化学的にTSとDPDの発現を調べ,さらに臨床病理学的因子との関連について検討した.その結果,どちらの症例群においても治療効果の得られたものはTSが強陽性の傾向を示していた.一方DPDの発現にはばらつきがあり,また,臨床病理学的因子との間に有意な関連性はみられなかった. 現在臨床検体での他の5-FU系薬剤の代謝と関係する酵素の発現について検討し,加えて,口腔癌細胞株での抗癌薬感受性と代謝酵素の発現との関係について検討を行っている.
|