いまだに充分な解明なされていない大脳皮質味覚野を健常者において特定すること、また長期的には短期のデータをもとに、口腔癌切除後に生ずる味覚障害や高齢者の味覚異常を脳磁場計測により他覚的、客観的に評価する方法を確立し、味覚障害に対する中枢制御機構を解明することを目的として本研究を立案した。最終的に味覚障害を減ずる切除法や再建法の考案、また味覚異常を最小とするエピテーゼ、プロテーゼの形態や素材開発、さらに味覚異常に対する新しい有効な治療法へとっなげていきたいと考えている。 今年度は研究初年度として以下について研究を行った。 1.味覚刺激装置の改良製作 現在の味覚刺激装置がつねに良好なconditionで使用できるよう改良を加えた。 2.味質刺激による健康成人MEG計測 上記の刺激装置を用い味覚情報を提示後、いつ、大脳皮質のどの部位で処理されるかについて解析する。この実験により大脳皮質の味覚野が特定さいれ、そのletarality(同側優位性か、対側優位に投射されるのか)について検索した。今年度は右利き成人5名に関して、1MNaClおよび0.03MサッカリンNaによる応答部位と潜時について計測した。その結果、1MNaClでは120ms付近にピーク潜時を認めたのに対し、0.03MサッカリンNaでは220ms付近であった。MRIとの重ね合わせでは両者ともほぼ同様に島・頭頂弁蓋部付近に脳活動部位が推定された。また、lateralityについては右側、左側、両側にでるものとさまざまであり、味質による違いは明らかでなかった。 今後は温熱刺激装置を用いたMEG計測について検討の予定である。 2.と同様な被験者を用い、味覚刺激装置のウォーターバスの温度設定を変えて味覚刺激を行い、味溶液の温度による潜時の違いはあるのかなどが明らかとなる。 これらすべての結果は現在までまったく報告、解明されていない新しい治験である。来年度内にコントロールのデータとしての短期目標は完了する予定である。 さらに口腔癌患者、高齢者、味覚異常者のMEG計測についても行い、健常者との比較を行ってゆく予定である。
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