研究概要 |
申請者はすでに,ラット側坐核の細胞外ドパミン(DA)量には,同部位に存在するオピオイド受容体が重要に関与していることを脳微小透析法による実験で明らかにしている。今回はさらに,側坐核に存在するオピオイド受容体の機能をより詳細に確認する目的で,側坐核の細胞外DA量に対する各種オピオイド受容体サブタイプ(μ,δ_1,δ_2)の機能と,それらの間に存在すると考えられる相互調節機構について検討することにした。 本年度は計画通り,各種受容体サブタイプ間における相互調節機構の様式を確認する目的で,それぞれの受容体サブタイプに選択的な作働薬の併用投与が,側坐核の細胞外DA量に及ぼす影響について検討した。 各種サブタイプに選択的な作働薬(μ:DAMGO,δ_1:DPDPE,δ_2:DSLET)をそれぞれ二種類の濃度(5.0nmol,50.0nmol)で側坐核に併用灌流投与した結果,全ての組合せ(DAMGO+DPDPE, DPDPE+DSLET, DAMGO+DSLET)において側坐核のDA量は用量依存的に増加した。また,申請者はすでに,DAMGOの単独投与によるDA増加効果は投与後約75分を境とする二相性であることを確認しており,この二相性のDA増加に対するDPDPEおよびDSLET併用の効果は,いずれの併用においてもDAMGOの単独投与時に認められる後半部分のDA量増加を抑制した。 以上の結果と,DAMGOによるDA増加効果はμ受容体の拮抗薬を併用しても完全には抑制されず,δ_1ならびにδ_2受容体拮抗薬の併用により部分的に抑制されるという以前の結果を考え合わせると,DAMGOによるDA増加にはμ受容体以外にδ_1やδ_2受容体を介する効果があり,また,二相性のDA増加効果のうち,特に後半部分の増加はδ_1ならびにδ_2受容体から抑制的な調節を受ける可能性が示唆された。
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