申請者は今回、各種オピオイド受容体サブタイプ(μ、δ_1、δ_2)の機能がラットの側坐核細胞外ドパミン量に及ぼす影響について検討する目的で、研究を計画、実施した。 16年度には、各種オピオイド受容体サブタイプに選択的な作働薬(μ:DAMGO、δ_1:DPDPE、δ_2:Deltorphin II)を用いた実験から、それぞれの受容体サブタイプの機能が側坐核の細胞外ドパミン量増加に重要に関与していることが確認された。 17年度は申請時の計画通り、各種作働薬の投与により増加したドパミンが神経活動に由来したものであるかどうかを確認する目的で、それぞれの作働薬にテトロドトキシンを併用した場合のドパミン量を測定した。また、16年度の実験結果から推測された、それぞれの受容体間における相互調節機構の様式を明らかにする目的で、各種選択的作働薬同士を併用投与した場合のドパミン量の変化についても検索した。 テトロドトキシン併用投与の実験では、DPDPEおよびDeltorphin II投与によるドパミン量の増加はほぼ完全に抑制されたが、DAMGO投与によるドパミン量の増加は完全には抑制されなかった。この結果からは、DPDPEおよびDeltorphin IIは神経活動を介してドパミン量を増加させることが明らかとなった。また、DAMGOには一部、神経活動を介さずに細胞外のドパミンを増加させる作用があると示唆された。一方、各種作働薬同士の併用投与実験では、DPDPEとDeltorphin IIの併用では、それぞれを単独投与した場合と同様にドパミン量は増加した。しかし、DAMGOとDPDPEおよびDAMGOとDeltorphin IIを併用した場合、DAMGOを単独投与した場合に認められたドパミン増加が部分的に抑制された。この結果からは、ドパミン増加におけるμ受容体の機能はδ_1およびδ_2受容体に抑制的に修飾されている可能性が示された。
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