生後2-12日齢のSprague-Dawley系ラット摘出脳幹スライス標本(300μm)を用いて赤外線透視条件下で三叉神経中脳路核ニューロン(MTN)より、whole-cell patch-clamp recording techniqueにより膜電流、膜電位を記録した。H16年度に引き続きMTNの発火パターンに対する細胞内セカンドメッセンジャーの修飾様相について、current-clamp recording条件下で反復発射活動を誘発して細胞内Caイオンのキレート剤であるBAPTA-AM投与前後でスパイク特性の変化について検討したところ、スパイク持続時間は延長、発射頻度は増加することが明らかとなった。この結果はIh(内向き整流性K電流)、INaP(持続性Na電流)単一コンダクタンス抑制の際にみられる反応とは相反することから、生理条件下では複数のコンダクタンスに対する異なる修飾作用により膜の興奮性が調節されていることが示唆された。さらにvoltage-clamp条件下でI_h、I_<NaP>を誘発し、5-HT(セロトニン受容体作動薬)あるいはACPD(グルタミン酸受容体作動薬)を作用させた際のIh、INaPの活動特性の変化について検討したところ、両電流ともに5-HTあるいはACPD投与により最大振幅値は有意に抑制された。また5-HT1受容体が抑制機序に有意に関与している可能性が示唆された。一方、修飾に関与している細胞内セカンドメッセンジャーについてはcAMP-PKA pathwayを選択的に抑制することにより5-HTの抑制作用は減弱し、細胞内Caイオン濃度を減少させることによりACPDの抑制効果が減弱したことから、cAMP-PKA pathway並びに細胞内CaイオンがMTNのneuromodulationに深く関わっていることが推察された。
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