ラット顎下腺に2%DMBAオリーブ油溶液を含ませた歯科用ボンディングスポンジを埋入して顎下腺腫瘍モデルを作成した。本実験系においては発癌剤埋入後、2週間程度でスポンジ周囲の細胞が変性し、多くの細胞は死滅するがその中で一部の導管細胞が残存し、これらが増殖して、6週間前後でスポンジ周囲を包囲する扁平上皮からなる嚢胞様の前癌病変へと変化する。さらに、その病変の一部が浸潤性に増殖を開始し約12週を経過した組織は角化傾向のある扁平上皮に類似した腫瘍組織を主体とし、導管様構造を伴った腺扁平上皮癌となる。 正常ラット顎下腺と発癌組織についてmRNA発現量をmembrane DNA Array (Atlas^<TM> Rat1.2 クロンテック社)を用いて比較検討し、発現量が2倍以上でバックグランド値(4)以上の差異がある場合に有意差があるとした。現在は、まだDNA Arrayの解析途中であり、正確なことは報告できないが、発癌により、全症例を通じて約50種の遺伝子の発現量が有意に増加し、約30種の遺伝子で減少を認めた。発現量が増加した遺伝子の中にはH-rasなどの癌関連遺伝子やProliferatug Cell Nuclear AntigenやCyclinなど細胞増殖にかかわる遺伝子が多く、今後これらの関連を検討する予定である。
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