本研究では、既存の装置では不可能であった下顎および舌の立体的な運動の同期的測定を行うことにより咀嚼、嚥下、発音などの口腔機能をより正確に評価し、さらには失われた機能に対するリハビリテーションにも応用可能なシステムを構築することを目的としている。具体的には、複数の小型永久磁石を磁気マーカとして利用した生体内直流磁界式モーションキャプチャシステムおよび6自由度運動計測方法での基本技術をベースとし、共同研究機関の本学電気通信研究所で開発に成功した常温では世界最高感度を有する高周波キャリア型薄膜磁界センサおよび交流磁界式のLC共振型ワイヤレス磁気マーカを導入することにより、口腔機能測定用として十分満足できるだけの100μm以下の位置精度を獲得することを目標とする。 本年度は、すでに完成している生体内直流磁界式モーションキャプチャシステムおよび6自由度運動計測方法での基本技術をベースとし、高感度高周波キャリア型薄膜磁界センサおよび交流磁界式のLC共振型ワイヤレス磁気マーカを導入することにより、口腔機能測定用として特化したシステムの開発を行った。 (1)LC共振型ワイヤレス磁気マーカの製作 高周波用高透磁率薄型磁性体を用いた集積インダクタおよび薄膜コンデンサからなる大きさ3mm×3mm、厚さ100μm程度の超小型ワイヤレス磁気マーカを製作した。 (2)センサ信号処理用電子回路の製作 共振周波数の異なる複数の磁気マーカからの情報を、磁界センサにより3次元的に計測するためのセンサ信号処理用電気回路の製作を行った。 (3)データ解析用ソフトウェアの開発 下顎や舌に配置された複数の磁気マーカより同期的に得られた計測データを解析し、下顎や舌を立体として構築した上で、6自由度運動として画面表示装置に表示するソフトウェアの開発を行った。現在、正常動作を確認しながら改良を行っている。
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