矯正歯科医による頭部レントゲン写真の解析処理は、1、解剖学的計測点の認識、2、決められた計測点間の距離や角度の測定、3、同じ性、同じ年齢層の群における平均と標準偏差による評価、という3つのステップにより構成される。この処理中で最も重要で時間の費やされるステップ1の解剖学的計測点の認識処理を数理モデル化することを本年度の研究対象とした。 本年度は4月から11月にかけて、成人の頭部レントゲン画像の収集を行い、スキャナを用いてデジタイズした。そして、経験を積んだ矯正歯科専門医によって行われた解析結果をデータベースに蓄積した。これらの作業により、465セットの専門医知識データ(レントゲン画像、解析結果)を得た。 465セットの専門医データ中、400セットをシステム知識データ生成用に、残りの65セットの専門医知識データをテストデータとした。まず、解析に用いる20種の解剖学的計測点それぞれに関して、400セットの専門医知識データから、ロイドの学習アルゴリズムを用いて15種のシステム知識データを生成した。また、単純に認識しようとする計測点の情報を用いて認識するのではなく、大きな特徴を用いて大まかな場所を見つけ、その後詳細な特徴を用いて認識するマクロビジョンサーチ手法を適用した。それに加え、計測点周辺の特徴となる部分も同時に認識し総合的に判断して認識する手法を開発し適用した。評価手法としては、臨床上の実用性能を評価するために、専門医群において発生するばらつき範囲を正解の基準領域としてその領域にシステムが認識した結果が入るかどうかで正誤を判定する手法を適用した。解剖学的計測点ごとにテスト用データ65セット中正解したデータセットの比率を正解率として定義し評価した所、20特徴点に関して平均88%の正答率が得られ、極めて見込みのある成果が得られた。
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