矯正歯科専門医が患者を診断する際に行う頭部レントゲン写真の解析は、1、解剖学的計測点の位置の認識、2、計測点間の距離や角度の計測、3、同じ性、同じ年齢グループに属する正常咬合者群から得られた計測値の平均と標準偏差を用いた評価、という3つのステップにより構成される。本研究課題では、この処理中で最も重要で時間が費やされる、解剖学的計測点の位置認識のステップを数理モデル化する。昨年度は、永久歯列期の頭部レントゲン画像上の解剖学的計測点を認識対象として数理モデル化を行い、20の計測点に対して平均88%の正答率が得られた。 本年度の4月から7月にかけては、昨年度開発した数理モデルを用いて、従来の画像処理技術で認識するのは極めて困難であった、画像のコントラストが低く複雑な構造を持つ軟組織上の解剖学的計測点の自動認識を行った。結果として、認識対象としたすべての計測点に対して85%以上の正答率を得た。 平成17年8月から平成18年2月にかけては、昨年度に用いた永久歯列期より、認識対象の形状や大きさのバリエーションが大きいため計測点の認識が困難な、混合歯列期の頭部レントゲン写真の収集を行った。収集したレントゲン写真を、スキャナを用いてデジタイズし、経験を積んだ矯正歯科専門医がそれぞれのレントゲン画像を解析し、465セットの専門医知識データ(レントゲン画像、解析結果)を得た。465セットの専門医知識データ中、昨年開発した数理モデル化手法を400セットに適用し、混合歯列期に対応した初期の数理モデルを開発した。現在、残りの65セットの専門医知識データをテストデータとし、作成した数理モデルの認識性能を検証中である。 また、昨年度の成果は、International Association for Dental Research 2006で発表予定である。
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