【目的】下顎頭は下顎骨の成長中心と言われているが、下顎骨の成長にどの程度関与しているかは明らかでない。また、機能的矯正装置による下顎骨成長促進効果についても賛否の分かれるところである。本研究では成長期マウスを用いて、下顎頭成長能力が下顎骨の成長にいかなる影響を及ぼしているのかを形態計測学的に明らかにした。さらに、器官培養にて機能的因子を排除した状態での下顎頭成長能力についても検討した。【試料および方法】生後2週齢C57BL/6Jマウス40匹に片側下顎頭切除を施し、下顎前方誘導装置の装着群と非装着群とに等分した。術後4週時に側面および背腹側方向の頭部x線規格写真を撮影し、Kiliaridisらの方法に従い形態計測学的分析を行った。次いで、生後2日齢マウス10匹の下顎骨を摘出し、正中で左右に分割した。分割片の一側の下顎頭を切除した下顎頭切除群と非切除群に分け、3週間器官培養後側面頭部x線規格写真を撮影し、同様に形態計測学的分析を行った。【結果および考察】片側下顎頭切除後、非切除側と比較して切除側下顎骨の骨体長は有意に小さかった。一方、片側下顎頭切除後、装着群においては切除側、非切除側ともに骨体長に有意差は認められなかった。また、器官培養にて咀嚼や筋活動に起因したあらゆる機能的因子を除去した場合でも非切除群と比較し切除群の骨体長は有意に小さく、下顎頭は下顎骨の成長に重要な部位であることが確認された。【結論】切除側下顎骨では前後方向の成長抑制が明らかとなった。また、下顎頭切除による成長抑制は下顎前方誘導により補償されることが明らかとなった。このことから、下顎頭は下顎骨の成長に重要な部位であるが、必ずしも不可欠な因子ではないことが強く示唆された。
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