今日、顎機能を分析する手段として、咀嚼筋筋電図、顎運動測定等により末梢における咀嚼動態を記録、解析する方法が主流となっている。しかし、近年解明されつつある中枢神経領域と咀嚼機能との関連性より、随意運動の起点となる大脳皮質の解析を行うことにより未知の因子を把握できる可能性を有している。そこで、本研究では咀嚼機能に対する新しい機能解析法として脳の機能局在論による脳機能マッピングについてfMRIを用いて中枢領域における咀嚼関連分野を同定すること、さらに、顎機能異常に対する中枢制御機構の関与を解明することを目的とした。 研究計画初年度として、特にfMRIの測定条件と、課題(タスク)が測定に与える影響について検証するため以下の実験を行った。 1)fMRIの測定条件の検討:3.0T臨床用MRIに頭部コイルを用い、最初に解剖学的位置付けのため、T1強調画像にて、全脳が観察できるよう水平断面で最低14スライスの撮像した。fMRIはシーケンスはEPI(Echo planar imaging)にて行い全脳を観察したが、撮像時には動きによるアーチファクトを防止するために被験者頭部をマトリックスにてケージ内に固定する必要が生じた。 3)タスクの設計:タスクは当初予定したon、off課題を一定時間繰り返すblockデザインに加え、fMRI撮像中に特定の事象を分散して配置するevent-relatedデザインを加えたところ、得られたマッピングデータは、類似の事象を行なっても、タスクの構築により異なったものとなった。 頭部の動揺については頭部固定に加えfMRI検定用ソフトSPM2にて補正が必要であった。また、得られたマッピングデータは、タスクの構築により異なっており、特に関連事象の条件付けや順序について十分考慮した設計が必要となった。
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