矯正歯科臨床で遭遇する歯根吸収のメカニズムを解明することを目的として、破歯細胞の出現由来である歯根膜血管網に着目し、実験的負荷を全く加えない生理的状態でめ歯根吸収発現部位における毛細血管の分布状態を観察した。 【方法】実験動物として生後6週齢のSD系ラットを用いた。試料採取後は通常の透過電顕試料作製に準じ、固定、脱灰、脱水、樹脂包埋し、下顎第一臼歯・第二臼歯間の歯周組織の横断連続樹脂切片(0.5μm)を420枚作製した。その後トルイジンブルー染色を施し光顕観察にて歯根吸収部位を検索し、その部位の歯根膜血管網の分布状態を比較検討した。 【結果】歯根吸収が行われている部位では、歯根膜内で毛細血管とセメント質が近接していた。 【考察】これらのことより、歯根膜内での血管の分布状態は、破歯細胞の出現に大いに影響を及ぼすものと思われ、矯正歯科臨床で遭遇する歯根吸収に関与することが示唆された。 *上記の実験内容に関しては、第一回九州矯正歯科学会(平成18年2月19、20日開催)にてポスター発表した。 今後は上記実験で作製した連続切片にイオンエッチングを施した後、走査電顕観察する。さらに連続切片を三次元再構築することで、破歯細胞の出現時における歯根膜内毛細血管の分布状態を三次元的に把握する。 また、同様の実験方法を用いて矯正力負荷状態での歯根膜の観察を行い、歯根膜毛細血管網の動態の観察および歯根吸収に関与する破歯細胞の出現経緯を解明していく。
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