自己組織化マップ(SOM)を応用した診断補助システムの構築にあたり、マップの作成に用いる学習用データの選定を行った。選定した資料は、成長期における骨格性反対咬合者で長期にわたり顎整形力を用い、同一の術者により被蓋の改善と成長のコントロールを行った40症例である。用いた顎整形装置の種類は、上顎の成長を促進するのに用いる上顎前方牽引装置と下顎の成長を抑制するのに用いるチンキャップである。平均治療期間は約10年で長期に及び、外科的矯正治療が適用されたかもしれないケースが多く含まれる。 現在行っている作業は、資料ごとの治療経過の整理と側面頭部X線規格写真分析のためのトレースである。これに平行して、平成16年度に行った反対咬合の治験例の資料を基にした自己組織化マップの臨床応用への研究により、治療効果を含む治療前後の顎顔面形態からSOMによりマップを作成し、スクリーニングを行う手法を検討した。この結果、将来的に上下顎関係の悪化が予想される領域が成長前の初診時のマップに示され、スクリーニングシステムヘの応用の可能性が示された。 このように、SOMによるシミュレーションを効率よく行うため、申請した平成16年度科学研究費補助金によるものとして、側面頭部X線規格写真とそのトレース図全体を一度にスキャンできるA3対応のフラットベットスキャナー、独自の計測点を設定可能なセファロ分析用ソフト、自己組織化マップのデータ解析と視覚化を行うソフトウェア、統計処理ソフト、計算用コンピューターの周辺機器を購入し設置と調整を行った。また、分析の終了した一部のデータを用い、実際にSOMでの学習に用い運用試験を行っている。 今後は、選定した資料の統計的分析を行いSOMへのスクリーニング用データとし、マップの有用性検討する予定である。
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