(1)細胞外アデノシンデアミナーゼ(ecto-ADA)によるアデノシンレセプター(AdoR)活性化制御機構の解析 歯肉線維芽細胞(HGF)上のCD26およびecto-ADA分子の発現をフローサイトメトリーにて確認した。さらに、同細胞上のecto-ADA量は、細胞質内にADAを豊富に含有するJurkat lysateを外因性ADAとして用いて細胞を前処理することにより増加を認めた。そこでecto-ADAによるAdoR活性化制御機構を解析するために、ADA特異的阻害剤2'-deoxicoformycin(dCF)の存在、非存在下においてアデノシン(Ado)による細胞内cAMP産生量を検討した結果、Ado添加による細胞内cAMP産生量の増加は、Jurkat lysateにて細胞を前処理し細胞上のecto-ADA量を増加させることにより抑制され、その抑制効果はdCFを添加することにより阻害された。このことより、ecto-ADAによるAdoR活性化制御機構を検討するための実験モデルを構築することに成功した。 (2)実験的歯周病モデルの確立 雄性Wistar系ラットの上顎左側第二臼歯歯頸部に絹製縫合糸にて結紮を行い、結紮処置1日目、4日目、7日目に上顎骨を摘出し歯槽骨吸収量を測定した。その結果、結紮処置を行った部位は継時的に歯槽骨吸収量の増加を認め、結紮後7日目では対照部位に比較して有意に高い歯槽骨吸収量を示した。さらに、結紮処置1日目、4日目、7日目に結紮部位および対照部位より歯肉組織を採取しPCR法にてIL-1β mRNAの発現を解析した結果、結紮部位の歯肉組織中のIL-1β mRNA発現は、結紮処置1日目、4日目、7日目のすべてにおいて、結紮処置を行わない対照側に比較して、著明に高いことが明らかとなった。このことより、炎症性サイトカインの発現誘導と歯槽骨吸収を伴うラット歯周病モデルの確立に成功した。
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