研究概要 |
神経栄養因子が歯周組織再生のsignalling moleculeとなる可能性を研究し以下の実験結果を得た。 IN vivoにおいて、ビーグル犬の下顎小臼歯部に3壁性の炎症性歯周組織欠損モデルを作成し、コラーゲンをscaffoldとして神経栄養因子(NGF, BDNF, NT-3,NT-4)を作用させた。作用4周後に、屠殺、切片を作成し、歯週組織(セメント質、歯週靱帯、歯槽骨)の再生状況を観察した。 BDNF(25μg/ml,50μg/ml)作用群(それぞれn=8)では歯肉上皮の侵入は認められず、control群に比べて有意にセメント質および歯槽骨の再生が認められた。またセメント質に垂直に埋入するコラーゲン線維も確認され、歯周靱帯の再生も認められた。しかし、NGF(25μg/ml,50μg/ml)およびNT-3(25μg/ml,50μg/ml)作用群(それぞれn=8)では歯根面に沿った歯肉上皮の侵入が認められ、control群に比べてセメント質および歯槽骨の再生ともに有意な差が認められなかった。また歯周靱帯の再生も認められなかった。 NT-4(25μg/ml,50μg/ml)作用群(それぞれn=3)ではBDNF作用群同様、セメント質、歯槽骨および歯周靱帯の再生がcontrol群に比べて有意である可能性が示唆されたが、実験数が少ないため、実験数を増やし、確証を得る必要がある。 よってビーグル犬を用いた3壁性の炎症性歯周組織欠損モデルにおいてはNGFおよびNT-3には歯周組織再生作用は認められなかったが、BDNFにおいては著明な歯周組織再生作用が認められ、NT-4も歯周組織再生作用を持つ可能性が示唆された。
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