本研究の目的は、ラットの歯根の背部皮下埋入モデルを用いて、歯根と共に粉砕した歯槽骨を皮下移植し、骨系細胞の存在下で歯根吸収、結合組織線維の再付着や硬組織の添加の有無に変化が見られるかどうかを病理組織学的に検討することである。 ラットの第3臼歯を抜歯し、歯冠と近心根を切断した後、歯髄を除去し、得られた遠心根を実験に用いた。また、ラットの下顎骨に付着している筋肉や上皮を除去し、歯牙を取り除いた後に、ボーンミルを用いて歯槽骨を破砕し、骨顆粒を作製した。 次にラットの背部皮下に切開を入れ、皮下結合組織をポーチ状に剥離し、可溶性ゼラチンカプセルに歯根と骨顆粒を入れ、皮下に挿入して縫合した。 6週後に歯根を周囲組織とともに採取し、4%パラホルムアルデヒドで固定、10%EDTAで脱灰し、AMeX法にてパラフィン包埋を行った。得られたパラフィンブロックから厚さ約4μmの連続切片を作製しHE染色およびTRAP染色を行った。 全ての切片で、破歯細胞の出現と歯根吸収が観察されたが歯根はかなりの部分が吸収されずに残存していた。また歯根周囲には、骨顆粒が散在し、破骨細胞の出現と骨吸収が認められたが、歯根と同様に完全に吸収されずに残っていた。また歯根表面には、核の大きい細胞が存在し、結合組織線維の付着が認められる部位もあったが、これらの細胞の種類は現段階では特定できず、明らかなセメント質形成はみられなかった。また、歯髄腔側にも硬組織の添加と結合組織線維の付着が認められるものもあった。 今後、移植期間を延長した試料と歯根膜を除去した歯根と骨顆粒を一緒に移植した試料を作製し、比較検討して行く予定である。これらの結果について検討後に、rhBMP2などの成長因子を添加する実験を予定している。
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