1.目的 本研究の目的は、高齢者における刺激唾液量およびその牽糸性(糸引き度)と歯周病との関連について調査することにある。 2.研究方法 平成10年度の調査で対象とした高齢者599人のうち、6年後のフォローアップ調査に参加した359人を研究対象とした。歯周組織診査は歯周ポケット深さ(PD)とアタッチメントレベル(AL)について行った。対象者にパラフィンワックスを3分間咬ませ刺激唾液を採取し、1分当たりの刺激唾液量(SFR)を算出した。唾液採取後速やかに、唾液牽糸性試験器ネバメーターを用いて唾液の牽糸性(SS)を測定した。 3.研究結果および考察 SFRと歯周パラメーターとの間に関連は認められなかった。一方、SS>2.00cmの者ではPD≧4mmの割合および平均ALが有意に高かった。SFR<0.7ml/minおよびSS>2.00cmを共に有する群は他の3群に比べて以下の歯周パラメーターが有意に高かった。平均PD(2.5mm)、PD≧4mmの割合(18.7%)、平均AL(4.2mm)、AL≧4mmの割合(54.3%)、そしてAL≧6mm以上の割合(19.8%)。 刺激唾液量と歯周病との関連は認められなかったが、唾液の牽糸性と歯周病との間には有意な関連が認められた。また、牽糸性に加えて唾液量を考慮した場合にさらに強い関連が認められた。これらの所見から、より重度な歯周病所有者をスクリーニングするためには、牽糸性と唾液量を評価すべきであることが示された。 4.結論 刺激唾液の牽糸性が高くその量が少ない高齢者においては、歯周病に対するリスクが高いことを示唆していると考えられる。
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