研究概要 |
妊娠期は、女性ホルモンのバランスや免疫機能の変化によって歯周病が悪化しやすくなることが知られている。近年、低体重児早産を引き起こした妊産婦から、歯周病原細菌Campylobacter rectusが高い割合で検出されることが報告されるようになった。しかしながら、そのメカニズムについては明らかにされていない。本研究では、in vitroにて、女性ホルモンの1つであるエストラジオール(E_2)がC.rectus, Prevotella intermedia等の歯周病原細菌の増殖に及ぼす影響、及びE_2がヒト歯肉線維芽細胞(HGF)の血管内皮増殖因子(VEGF)産生に及ぼす影響について調べた。 C.rectus, P.intermedia等の歯周病原細菌を37℃、嫌気状態にて液体培養したものを培地成分で希釈後、50 ng/mlとなるようにE_2を添加し、96穴マイクロプレートに移した。さらにこれを37℃、嫌気状態にて培養後、655nmにおける吸光度を測定した。また、HGFのコンフレントモノレイヤーにE_2を添加し、これを37℃、5%CO_2にて24時間培養後、ELISAにて培養上清中のVEGFを測定した。 E_2が歯周病原細菌の増殖に及ぼす影響について調べた実験では、E_2を添加して培養したC.rectus及びP.intermediaで有意に高い吸光度を示した。また、E_2がHGFのVEGF産生に及ぼす影響について調べた実験では、E_2を添加して培養したHGFでより多くのVEGFを産生した。以上より、女性ホルモンが多く分泌される妊娠中ではC.rectusが増殖しやすくなり、また、妊娠中ではVEGF産生によって歯周組織の血管透過性が亢進しやすくなる可能性が示唆された。
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