本研究は、舌苔と喫煙等の生活習慣およびストレス、倦怠感等の自覚症状との関連性について、科学的に実証することを目的とした。1年目の研究として、まず、文献の検索を行い、予備検討を行った。調査対象は、某歯科大学の5学年生100名とし、質問紙調査を実施後、デジタルカメラ(NIKKON D70、東京)で舌を撮影した。質問紙の内容は、年齢、性別、歯磨き回数、舌ブラシの使用の有無、喫煙、飲酒、胃腸症状、ストレス、倦怠感であった。撮影した舌のデジタル画像は、キャスマッチ(ベアーメディック、東京)により色調補正し、パソコンの液晶画面上で舌苔を観察した。そして、舌を左、中央、右の3区分、舌尖、中央、舌背の3区分、合計9区分に分割した。舌苔の色の判定は、舌苔の色を黄苔、白苔、なしに分類し、1区分でも黄苔が認められた場合を「黄苔」、黄苔が全く認められなく1区分でも白苔の場合を「白苔」、1区分も黄苔も白苔も全く認められないものを「なし」とした。舌苔の量の判定は、1区分毎に舌苔なし(0点)、薄い舌苔(1点)、厚い舌苔(2点)を判定し、9区分の合計点数(0-18点)を舌苔の量とした。対象者の舌苔の色と量の判定後、舌苔の色、量と質問紙の内容との関連性を統計的手法を用いて検討した。質問紙の回収できなかった者、舌背の部分の撮影ができなかったものを除いた結果、93名(平均年齢24.5±2.4歳)が分析対象者となった。舌苔の色の所有者率は、なし、白苔、黄苔が、それぞれ、4.3%、74.2%、21.5%であった。舌苔の量は、区分毎の平均点数は舌背中央部の1.5点が最も高く、9区分の合計平均点数は5.9点であった。舌苔の色と有意な関連性を持つ質問項目は認められなかった。舌苔の量と有意な関連性が認められた質問項目は、性別、歯磨き、胃腸症状であった。今後、実施方法に改良を加え、大規模な集団における調査を実施していく予定である。
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