研究概要 |
今年度は,環境心理学の調査手法(評価グリッド法)を用いて,入院患者が療養環境をどのように評価しているのか明らかにすることを目的とした。 1.データの収集 県内の一般病床を有する病院にて実施した。対象者は短期入院予定患者女性3名,男性2名であった。入院後の時間経過による環境評価の変化を明らかにするため,(1)入院直後(2〜4日目)と(2)その後約1週目(9〜11日目)に評価グリッド法を用いたインタビューを行った(女性1名は病状変化のため(2)は中止)。 2.結果 (1)調査日(1)入院直後の評価 評価内容は多岐にわたった。同じ環境について「好ましい」,「好ましくない」という両方の評価があり,またその理由も「(自分自身が)気持ち良い」という評価と,「他者に気兼ねしない」と他者が評価の視点に入っている場合があった。 (2)時間経過による評価の変化((1)から(2)での変化) 女性2名で変化が見られた。1名は,(1)では一人で過ごせる環境を評価していたが,(2)では他者と話ができるなどの理由から多床室や多目的スペースを評価するようになった。また(1)ではおおまかな印象で評価していたが,時間経過とともに細かな使い勝手なども気になるようになっていた。他の1名は,(1)で「好ましい」環境でも,(2)では細部に病院らしさが見えるようになり「好ましくない」環境に変化していた。 3.今年度の調査から得られた知見 短期の入院であっても,時間経過とともに他者との関係,細部の使用感などを評価する視点が現れており,満足度調査等において療養環境についての患者の評価を調査する際には,入院期間による差異が生じる点,評価の背景には人間関係等も影響している点を考慮する必要があることが考えられた。
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